Vim advent calendar2011 10日目 : VimとKinesisの話
全国のVimmerのみなさまこんばんは。Vim Advent Calendar 2011 : ATNDの10日目は私@choplinからお届けします。
Vimとキーボードの関係
Vimmerであれば当然常日頃からエディタとしてVimを使っていることと思います。中には単なるエディタであることに満足できずにシェルやファイラなどの環境、果ては家族としてVimと接している方もいるようです。
いずれにせよVimmerはコンピュータ側のインターフェースとしてまずVimを選択してるということです。では、物理世界はどうでしょうか?如何なるVimmerといえど物理世界のインターフェースを通さずにVimと接することはできないはずです。*1
コンピュータ型のインターフェースとしてのVimに拘りを持つ貴方は、ぜひ物理世界にインターフェースとしてのキーボードにも拘ってみてください。より貴方にマッチしたキーボードと共に、きっとよりよいVimライフを送ることができるはずです。
本エントリでは私が日常使っているKinesisキーボードと、Vimとの関係をご紹介したいと思います。
なお、キーボードを会社に置き忘れてきたため、一部画像はイメージでお届けします。
Kinesisって?
KinesisとはアメリカのKinesis社から販売されているキーボードのことです。
Kinesis社が販売しているキーボードにはいくつか種類があるのですが、個別の商品名を挙げずに単にKinesisと言った場合にはAdvantage Contouredを指すことが多いようです。
Kinesis Advantage Contouredキーボードについて
まずはその外観を見てください。
美しいですね。無骨さを残しながらも細部にわたって打鍵を打つための工夫が凝らされたその姿は正に機能美という言葉を体現していると言えるでしょう。
あえてカテゴリ分けをするならば、いわゆるエルゴノミクスにあたるかと思います。
しかし、Kinesisは単に曲線を用いただけの名ばかりのエルゴノミクスキーボードとは一味違います。
Kinesisで打鍵を繰り返すうちに、Kinesisが真に人間が使うためにデザインされたことが伝わってきます。
Kinesisのハードとしての特徴は各所に記事が上げられているので、本エントリではKinesisのデザインが使った人間にどう影響を与えているかという視点でいくつかKinesisの特徴をご紹介したいと思います。
肘が直線になる
Kinesisを使ったことがない人Kinesisを見ると、まず始めに右手部と左手部が分離された構造が目に付くと思います。
一般的なキーボードでホームポジションに指をおくと、大凡以下のような腕の位置になると思います。
Kinesisでは左右が分離された構造により、下のように肘から直線的な位置に腕を置くことができます。
余りにも肘を曲げるスタイルが一般的なため、肘から直線になるメリットは伝わりにくいかもしれません。人にもよりますが、肘から直線になるポジションではよりリラックスというか余分な力が抜けるような感じになります。
こればかりはこればかりは体験して頂かないことには分からないと思いますので、機会があれば是非試して下さい。
特に後継姿勢を取る方は、肩から肘にかけて力が抜ける感覚を味わって頂けると思います。
指の動きだけですべてのキーを打てる
肘を曲げるスタイルだとEscキーやBSキーなど隅にあるキーを押す際に手首を曲げる必要があります。
少ない回数であればなんてことはないのですが、ESCを打つたびに手首にダメージが蓄積していき、痛みを感じるようになります。*2
上のKinesisの写真を見ていただくと、左手部右手部が手の形に併せて凹んでいることが御覧いただけるかと思います。
更によく見ていただくと分かりますが、実は各キー毎に微妙に段差がついています。*3
この窪みと段差によって、Kinesisでは殆ど手首を動かすことなしに、全てのキーを打鍵することが可能になっています。
これこそがエルゴノミクスでありKinesisの真骨頂です。
Vimであれば打ちにくいキーを別のキーにmapすれば済む話*4ではあるのですが、物理的に手首の動きをなくすことで全キーを無理なく使用することが可能になり、何にmapするかで頭を悩ませる必要がなくなります。
また、必要以上mapすることを避けることで、リモート作業など素のvimを使わざるを得ない場面でも、普段のvimの操作感との差を少なくすることができるでしょう。
余談ですが、この指だけで打鍵する操作感と、上の肘が直線になるポジションで長く打鍵していると、まるで攻殻機動隊のオペレータのような気分になります。
みなさんも是非この感覚を味わってみて下さい。
親指を活用できる
みなさんは普段打鍵する時に、親指を何に使っていますか?
今私の手元にあるMacbook Air日本語配列だと、親指で打つのはSpace、英数、かな、さらに手首を動かすならCommand、option辺りでしょうか。
Kinesisでは親指部も左右で分離されている上に、左右それぞれで6つものキーが親指に割り当てられています。後で述べますが、Kinesisではこの合計12個のキーに好きなキーを割り当てることができます。
親指は細かい動きには向きませんが、力は強いので、モディファイアキーのように押しっぱなしにする目的には優れた働きをしてくれることでしょう。
好みの配列にできる
Kinesisはその独特な形状から、キーの元々の配列はかなり独自なものになっています。
ですが、Kinesisの機能の一つとして、全てのキーのマッピングをハードウェアレベルで自由に設定することが可能です。*5
よくVimを使う利点として、CtrlやShiftなどのモディファイアキーを使う頻度を下げることができて小指にやさしいという点が挙げられます。中にはEnterすら遠いので独自のmapを設定している方もいるようです。
さらにそこにKinesisを組み合わせることで、親指部などにモディファイアキーを持ってくることが可能になり、小指を無理な負担から完全に開放することができます。
Ctrlの押しすぎで小指を痛めVimに移ってきた方は、キーボードをKinesisに変えることで更なる安らぎを得ることができることでしょう。
欠点
上に挙げた通り素晴らしいキーボードであるKinesisですが、完全無欠に見えるKinesisにも欠点はあります。
高い
高いです。日本でのKinesisの販売・サポートはフット用マウス・Kinesis社製品(フットスイッチ・キーボード)販売 オリジナルUSBメモリ製作 エジクン技研というところが行なっています。
通信販売も行なっており*6、執筆当時の値段は27,980円です。
私は最早Kinesisがキーボードの基準となってしまったため分からないのですが、一般的にはキーボードとしては高価な部類に入るようです。
他に高級キーボードとされる、Realforce(19,610円)やHHK(19,720円) *7と比べても頭一つ抜けています。
しかし、これでも値下げされたのです。今年前半辺りに値下げされるまでは40,000円弱でした。さらにエジクン技研が取り扱う前は、自分で輸入するしかなく、日本でのサポートが受けられない上に、高い送料を負担する必要がありました。
エジクン技研がいつまでKinesisを取り扱うかは分からないので、Kinesisに興味が有る方は、値下げに踏み切ってくれたエジクン技研に感謝しつつ今の間に手に入れておきましょう。
でかい
でかいです。左右部を分離されている上に親指部が充実しているという構造上、これはさけられません。
目測ですが、一般的なサイズのキーボードに比べて、サイズで1.2-1.5倍程度はあるのではないかと思います。中は空洞なため、重さはそれ程ではありません。
せめて真ん中の空いているスペースを有効活用したいところではあるのですが、微妙に湾曲しているため物を置いても安定しにくく、未だに上手い使い方は見つけられていません。
この記事を読んでKinesis導入してみようと思った方は、まず机の上を整理整頓してKinesisを置くスペースを確保して下さい。それでもスペースが足りない方は、Kinesisを使うことによる生産性向上を武器に、上司に広い机をもらえるように交渉して下さい。
英語配列がベースとなっている
上記したとおり、Kinesisは独自の配列ではあるのですが、ベースは英語配列となっています。
その為、半角/全角などの日本語配列ようのキーが存在しません。配列自体は自由に設定できるので問題にはならないのですが、キーが足りないことで日本語環境でたまに不便なことがあります。
私はWindowsでもLinuxでもIMEの切り替えに半角/全角キーによるトグルではなく、無変換にIME OFF、かなキーにIME ONを割り当てて、Macのようなスイッチ操作にしているのですが、Kinesisでは無変換やかなキーがありません。
そこでF7やF8を親指部に割り当ててIME OFF/ONに使っているのですが、FunctionキーはIME操作のためのキーではないので、たまにアプリのキーマッピングと衝突してイライラします。
明日は
Vim advent calendar 明日はLayzieさんです。よろしくお願いします。